Hatsune Miku (Japanese)

Hatsune Miku (Japanese) Illustration by KEI © Crypton Future Media, INC. www.piapro.net.jpg

バーチャル・シンガー 初音ミク

レディー・ガガのオープニングアクトが世界中で話題に

インターネット上で圧倒的な人気を誇る日本のスーパースターはバーチャルな存在だ。初音ミクは、ファンによる10万以上もの曲を生み出すことを可能にした音楽ソフトウェアだ。3DCGによるライブパフォーマンスなどを国内外で行い、革新的な要素で世界中を熱狂させている。2014年には、レディー・ガガのツアーでオープニング・アクトも務めた 。この日本のバーチャル・シンガーを生んだクリプトン・フューチャー・メディアに、東京ジャーナルのエグゼクティブ・エディターアントニー・アルジェイミーが話を聞いた。

TJ: “VOCALOID(ボーカロイド)”について簡単に説明してください。
クリプトン: 「VOCALOID」はヤマハ株式会社様が開発した、歌声合成技術です。この技術を搭載したソフトウェアとして誕生したのが「初音ミク」です。パソコン上でメロディと歌詞を入力すると、そのとおりに歌を歌ってくれます。

TJ: 初音ミクは「未来からの最初の音」という意味だそうですが、ボーカロイドは本当に音楽の未来なのでしょうか?
クリプトン: “楽器の音”をパソコン上で再現するソフトウェアは数多くありましたが、「VOCALOID」が登場するまで“人間の歌声” をここまで再現できるソフトウェアはありませんでした。弊社は「初音ミク」が、まさに“未来からきた初めての音”と言える存在だと考えております。

TJ: 初音ミクを最初に考案したのはどなたですか?
クリプトン: 「初音ミク」は特定の人物の考えにより誕生したものではございません。弊社スタッフが、クリエイターのために考えぬいた末に誕生したソフトウェアです。

TJ: 初音ミクのコンセプトについて教えてく ださい。
クリプトン: 「VOCALOID」技術を使用した、歌声合成ソフトウェアです。声優の藤田咲氏の声を元にして作られました。“未来からきた初めての音”という意味を持つ「初音ミク」という名前が付けられております。年齢 16 歳、身長158cm、体重42kg というプロフィール設定がございます。

TJ: 画像としてのみ存在するデジタルスターとして、ミクの外観は極めて重要ですが、どのようにして初音ミクの見た目を決めるに至ったのですか? 初音ミクは特定の誰かをベース にしていたのですか? また、ミクは青緑色のツ インテールで知られていますが、なぜその色でそのスタイルなのですか?
クリプトン: 「初音ミク」は、ヤマハ株式会社様のシンセサイザー「DX-7」をモチーフにしてデザインされました。このシンセサイザーの一部に、「初音ミク」の髪色である青緑色が使われております。また“未来からきた初めての音”という名前、“人間の声を元にしているけれど実際の人間の声ではない”という特徴か ら、近未来的かつアンドロイド風のイメージで制作されました。そのイメージのひとつとして、現実にはありえないほど長いツインテールが描かれております。

TJ: 初音ミクは生まれてからこれまでの間に何か変わっていますか?
クリプトン: ソフトウェアとしては、2013年に最新バージョンを開発・発売しております。キャラクターのプロフィール設定は現在も変わっておりません。

TJ: 初音ミクについては、デザイナーを固定せず、複数のデザインを採用する形にしたのはなぜですか?
クリプトン: 「初音ミク」は様々なクリエイターの創作により広まりました。弊社はそのようなクリエイターたちの創作活動をもっと応援していきたいと考えております。そのため、様々なクリエイターの作品を起用し続けております。

TJ: 声優の藤田咲さんはミクのベースとなった声を提供しましたが、今でもミクに関して何か役割を持っているのですか。
クリプトン: 2013年に発売となった最新のソフトウェアでも「初音ミク」の元となる声を担当して頂いております。また、弊社のイベントなどにご登壇頂くこともございます。

TJ: もともとの初音ミクのマーケット対象はどんな人々でしたか。
クリプトン: 歌声合成ソフトウェアとして、音楽クリエイターをターゲットに製品化されたものでした。

TJ: 初音ミクを動画化し始めた過程について教えてください。
クリプトン: 「初音ミク」の動画化については、 弊社ではなくクリエイターの方々がはじめられたものです。最初は楽曲と静止画だけで構成された動画が、動画共有サイトに投稿されておりました。そのうちに、楽曲とアニメーションで動画を制作するクリエイターが現れ、動画の創作が活発になっていきました。

TJ: 初音ミクはボーカロイドの最初の作品ではありませんが、初音ミクを大きな成功に導いた要因は何だと思いますか?
クリプトン: 確かに、「初音ミク」は最初に製品化された「VOCALOID」ではございません。しかし、弊社では「VOCALOID」ソフトウェ ア登場当初より、取り扱い・開発を行っておりました。2004年に初の日本語版「VOCALOID」 として発売されたのが、弊社開発のソフトウェ アである「MEIKO」です。この「MEIKO」で、パッ ケージに初めて女の子のキャラクターを用い、話題となりました。「初音ミク」はそれを踏襲しつつ、新たな技術・コンセプトで打ち出し、多くの人にご利用頂けるソフトウェアとなりました。クリエイターに対し、ガイドラインを遵守することを前提に、公式のキャラクター画像を利用可能にしたこと、二次創作を許諾したことも創作を助長する要因になったと考えております。

TJ: ミクが発売された2007年以来、業界に大きな変化は見られましたか? ミクがこのよ うなブームになると予測していましたか?
クリプトン: 「初音ミク」以降、「VOCALOID」ソフトウェアのパッケージにキャラクター が起用されることが多くなったと認識しております。「初音ミク」を発売する前は、現在ほどの大規模なムーブメントとなることはまったく予測しておりませんでした。「初音ミク」の楽曲だけでなく、イラストや動画が数多く誕生していく中で、その拡大と、新たな創作文化のはじまりを感じました。

TJ: ミクはクリプトン・ フューチャー・メディア によって作られたもので あると同時に、何百万ものファンによって作られたクラウドソースの創作でもあります。クリプトンはミクについてどの程度影響力を持っていますか?
クリプトン: 「初音ミク」 はあくまでも弊社のソフトウェアであり、権利を有するキャラクターです。弊社制定のガイドラインを遵守することを前提に、自由な二次創作を認めております。これにより、多くのクリエイターによる「初音ミク」の作品が生まれ続けているのです。商用利用に関しては、上記ガイドライン外となりますので、案件ごとに管理しております。

TJ: ファンによって作られたミクの曲は10万曲以上ありますが、それらのレパート リーを管理している人はいますか? また、それらの曲の著作権は誰が所有していますか?
クリプトン: 「初音ミク」という名称・キャラクター像に関しては弊社が権利を有しており ます。商用利用を検討する場合は、規約に基づき、弊社への申請が必要となります。しかし、作品自体に関しては制作されたクリエイター の方が権利を有しております。

TJ: (ミクの)ブランドはどのくらい国際的になりましたか? それは戦略的に実現させたのですか?
クリプトン: 現在では、海外でのコンサート・イベントや、海外アーティストのツアーへの参加が行えるほど、世界中にファンの方々がいらっしゃいます。インターネットを通じて広まったという背景もあり、国境を超えて多くの方々に楽しんで頂いております。また、海外の方にも創作を楽しんで頂けるよう、英語歌唱に対応したソフトウェアを発売したこともひとつの要因としてあげられます。

TJ: ファンレターは届きますか?
クリプトン: 小さなお子様からご老人まで、幅広い年代の方からファンレターを頂きます。「初音ミク」への愛情をとても熱心に綴ってく ださっているものばかりです。

TJ: ミクの性格の設定がされていないのは何故ですか?
クリプトン: 「初音ミク」には、あえて年齢、 身長、体重の設定しか設けておりません。それ らの基本的な情報を元に、クリエイターの方々が自由な発想で創作が行えるよう、性格等の設定は設けずに展開しております。

TJ: クリプトンの代表取締役・伊藤博之さん は「公共の福祉と教育の分野で顕著な功績を挙げた」ということで藍綬褒章を受賞しました。初音ミクはこのことにどう寄与しているのですか?
クリプトン: 「藍綬褒章」は、教育・医療・社会福祉・産業 振興の分野で公衆の利益をもたらした者などに与えられる褒章で、代表の伊藤は“新規産業 功績”が評価されました。この“新規産業功績” のひとつとして「初音ミク」の展開が評価され たのだと考えております。

TJ: 海外でのコンサートの反応は日本のものと違っていましたか?
クリプトン: 「初音ミク」は海外でも複数回コ ンサートを行っております。なお、国内でも海外でもコンサート・お客様ごとに反応が異なり ますが、多くの方が楽しんでくださっていると思います。

TJ: ミクのような偶像的製品を維持し、何年間も彼女の人気を保ち、成功させ続ける秘密は何ですか?
クリプトン: ガイドライン制定によって自由な二次創作を認めたことが要因にあると思います。これにより多様なクリエイターが、楽曲・ イラスト・動画など、自身が得意とする分野で創作に参加していき、大きな創作の輪が広がりました。また、創作するだけでなく、その多様で膨大な「初音ミク」コンテンツの中で、自分の琴線に触れる作品を見つけられることが、魅力のひとつになっているのではないでしょうか。

TJ: 初音ミクは将来他の音楽ジャンルに挑戦すると思いますか? または他の業界にも?
クリプトン: 「初音ミク」は多くの方に音楽や創作を楽しんで頂くために展開しております。これからも、より多くの方々に創作の楽しさを知って頂けるよう展開を進めて参ります。 tj

The complete article can be found in Issue #275 of the Tokyo Journal. Click here to order from Amazon.

Written By:

Anthony Al-Jamie

Anthony Al-Jamie lived and worked in Japan for over 20 years. His in-depth understanding of Japanese language and culture has allowed him to carry out interviews with many of the most renowned individuals in Japan. He first began writing for the Tokyo Journal in the 1990s as Education Editor, later he was promoted to Senior Editor, and eventually International Editor and Executive Editor. He currently serves the Tokyo Journal as Editor-in-Chief.



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